2005年12月08日

第37話 自転車を引き倒された

自転車を引き倒された



コロを連れて散歩をしていた時のことだ。草むらに行きたがるコロをなだめながら自転車をこいでいると急に彼が立ち止まって動かなくなった。近くの繁みに魅力的な匂いをかぎつけたらしい。強引にリードを引っ張るコロに引きずられるように僕は自転車ごと引き倒されてしまった。

コロに自転車から引き倒されたのは久しぶりだ。

と落ち着いて考えられるようになったのはしばらくしてからのことで、この時は虫の居所も悪かったのもあいまって僕はコロを怒鳴りつけてしまった。

怒りのままに怒鳴りつける主人に圧倒されたのか、コロは萎縮して小さくなっている。
それからは僕のリード裁きに敏感に反応するようになった。過剰に僕の顔を伺っているようだった。

僕は怒鳴ってしまったことに自己嫌悪になっていた。コロの間の気まずい雰囲気も嫌な感じだ。

確かに散歩途中で強引に自転車を引き倒すほど引っ張るのは、ルール違反だけど注意不足だった僕のほうも悪い。普段だったらそんな事態になる前にコロの行動を制御して事なきを得ていたはずなのだ。

一方的に怒鳴ってしまったことにも、人間にとって都合のいい犬だけをいい犬と決め付けて、自分に都合の悪い犬を悪い犬と決めつけている自己欺瞞の飼い主のようで嫌だった。
犬にだって犬の都合があるのだ。人間の都合だけでいい犬悪い犬が決まるわけではない。

気まずい沈黙の中で散歩を続けるのも嫌だったので、公園のベンチに腰掛けて一休みすることにした。

僕はこういう時にどうしたらいいのか知っている。自分の気持ちを宥めるためにもコロと仲直りをする簡単な方法があるのだ。

それは犬がいつもやっている必ず出来る簡単な命令出して、それに従った犬を褒めることだ。

「座れ」と声をかけてそれに応えるコロをことさら大袈裟に褒めた。首筋を何度も撫でながら大きな声で「よーし、よーし」と声をかけているとコロもうれしそうに尻尾をふってくれた。
先ほど怒鳴りつけた飼い主にも、そんなことは少しも気にかけた様子もなく精一杯の信頼した目で応えてくれる犬を見ていると、気まずい気持ちを引きずっていた自分が恥ずかしくなってきてしまう。

僕にとっては今目の前にいるこの犬ほど「いい犬」はいない。




posted by ころすけポー at 14:12| Comment(0) | TrackBack(0) | コロとの日々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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