2006年06月26日

第41話 チワワな人

チワワな人



そのオジサンを見かけたのは数ヶ月前のことだ。コロの散歩の途中で同じように犬連れの男の人がいた。変った散歩の仕方で犬に引きずられるようにして歩いている。
我が家のコロのように大型の犬なら少し引きずられるように歩いていても仕方がない(躾としてはそうさせてはいけない)と思うのだが、そのオジサンの連れているのは小さなチワワなのだ。

このチワワがまたしつけがまったく出来ていないようで散歩の最中に勝手に向きを変えて走り出したり、いつまでも繁みの中の臭いをかいだりして我が物顔に振舞っている。その身勝手な犬の行動にあわせるようにリードを持ったおじさんが必死にチワワを追いかけて走っている様子は、初めて見たときにはとても不思議な気がした。

「ハチ、ハチ…」おそらく犬の名前なのだろうが、そう連呼しながらも叱るでもなく小走りに走り去る年配のオジサンは見ているだけでもかなり面白かった。

ハチという名前のチワワは忠犬ハチ公とは似ても似つかないくらいのがらっぱちの性格のようだし、犬の方ではなくて連れている飼い主の方が家来になっている様子は、「忠義を尽くされている犬」という意味で忠犬なのかもしれない。

犬と飼い主というようりも王様と召使と言った方がそのイメージに合う。

僕のなかでこのおじさんを『チワワな人』と呼ぶことに決めた。


チワワな飼い主とは散歩の時間帯がほぼ同じようで、それからも何度か見かけた。あいかわらずチワワに引きずられるようにして小走りに走っている。

なぜこのおじさんは自分で立ち止まらないのだろう。痩せていて線の細そうな男性とはいえ人間の体重ならば、いくら怪力のチワワでも引き摺りまわせるとはとうてい思えない。この男性が立ち止まりさえすれば、チワワはリードで繋がれているのだからそれ以上の距離は自分勝手に走り回れないだろうに・・・

と考えてふと気がついた。おそらくこの気の弱そうな飼い主にとって、リードで引っ張って可愛いチワワの首を絞めるようなことができないのだろう。チワワの首輪を引っ張って苦しめてしまうことなど想像もできず、行きたい方に走っていってリードがピンと張らないように心がけているのにちがいない。

なんという忠臣…

一瞬、志村けん演じるバカ殿様を追いかける年老いた家老のコントを想像してしまった。

犬の飼い方の知識をひけらかして、躾がなってないとか主従関係が逆になっているというのは簡単だけど、この気の弱そうな『チワワな人』とハチの関係はそれはそれでいいのかなと思わないでもない。


「ハチ、ハチ…」

今日もチワワな人はバカ殿犬を追いかけて小走りに走り去っていった。



posted by ころすけポー at 11:18| Comment(0) | TrackBack(0) | コロとの日々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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